KubeCon + CloudNativeCon 2025 Tokyo 参加レポート
2025年6月16日、17日にKubeConが初めて日本で開催されたので、参加してきました。以前、KeynoteスピーカーであるMauricioと彼の出版した書籍に関連するイベントで会話した際に本イベントを紹介され、今回の参加に至りました。
弊社でもKubernetesを実験的に運用しているため、非常に参考になる内容が多く、今後のエンジニアリングにおけるアーキテクチャ設計のヒントを得ることができ、大変有意義な二日間でした。
全体的な印象
当初はAI関連の話題が中心になるのではと予想していましたが、実際にはPlatform Engineering、Dynamic Resource Allocation（DRA）、セキュリティ、多様なインフラ戦略など、幅広いトピックがバランスよく扱われていました。知らない分野のセッションにも多くの学びがあり、非常に実りある機会だったと感じています。
来場者数は約1500名とのことでしたが、予想以上の反響があったこともあり、来年も東京でKubeConが開催されることが初日にアナウンスされました。今回のように登壇者や参加者と直接意見交換できる機会が得られるので、来年もぜひ参加したいと思っています。
AppleのPKLとマルチクラウド抽象化
個人的に最も印象に残ったセッションは、Appleのエンジニアが発表したPKL（Project Configuration Language）を活用したマルチクラウド環境の抽象化レイヤーに関する内容でした。
PKLは、Appleが開発したなテンプレート言語であり、以下の特徴を備えています：
- 強い型付けによる構文・意味エラーの抑止
- モジュール化により構成の再利用性が高い
- LSP（Language Server Protocol）対応によりIDEとの統合が可能
- Git Flowとの整合性が高く、構成管理のCI/CDパイプラインに統合しやすい
セッションではAppleでの具体的な利用方法などは解説されていませんでしたが、、複数のクラウドサービスを横断的にデプロイ可能な構成の設計思想が紹介されていました。私もプレゼン終了後に、異なるクラウド間でどこまで抽象化できているか質問させていただきましたが、「Storageなどの共通部分を中心に抽象化対象としている」とのことでした。Kubernetes/crossplaneを経由してデプロイすることでエンジニアの認知負荷を下げる試みは非常に共感しました。
今後、PKLに触れてみて自社環境に応用できるか検討してみたいと考えています。
Dynamic Resource Allocation（DRA）について
Kubernetesでは通常、Podに対するリソース割り当てはrequestsやlimitsで宣言的に定義するのが基本です。しかし本イベントでは、Dynamic Resource Allocation（DRA）に関するセッションも多かったです。
2025年現在ではクラウドベンダーがGPUの動的割り当てやネットワークに関するDRAはサポートしているようですが、ネットワークやストレージに関するDRAに関してのDRAの発表があり非常に勉強になりました。
特にTopoLVMに関する発表は、KubernetesのPersistent Volumeに対する動的制御において、「なぜこれが標準でサポートされていないのか？」と感じるほど発想がシンプルかつ実用的で、非常に刺激的な内容でした。
Kubernetesの将来性
Kubernetes関連のイベントは今回初めて参加しましたが、5年以上前に私がKubernetesを触っていた時よりも熱量がだいぶ高くなっている印象を受けました。基本的にはCloud上のkubernetesでの運用方法の話がでてくることも多かったですが、Multi Cloud / Hybrid Cloudなどの環境を整えて、より堅牢なシステムを今後作っていくとの話も多かったので、今後のKubernetesの活用にはより期待をしたいと思います。
まとめ
KubeCon Japan 2025は、単なる技術紹介に留まらず、現場が直面している課題に対して、どのように取り組んでいるのかを共有する場として非常に有意義なイベントでした。PKLによる構成の標準化、DRAによる柔軟なリソース管理など、今後のシステム設計において重要な示唆を数多く得ることができました。
弊社でも今回得た知見を元にKubernetesの活用をしていき、開発効率を高めれる基盤づくりをしていきます。
